木材のちしき

木造住宅と都会の森

現在、地球環境の危機が世界中で叫ばれています。 しかし、木造住宅を建てるために木材を使うことで森林が伐採され、ひいては自然の破壊につながっているとは、実は一概に言えないのです。 森林を伐採することで、地球の環境を守る役割を十分に果たすことができるということもあります。


 

森林の伐採と言っても、植林されたのち適切に管理された森林で、成熟して寿命がくる少し前の木材を伐って使用することと、再生に時間がかかる熱帯雨林などの森林を伐採することは本質的に違います。 また、下草が生い茂り、光も差さないうっそうとした森林よりも、適切な伐採と植林を繰り返したほうが、若木の成長により活発な大気浄化作用が見込めますし、管理の行き届いた人工林のほうが、手つかずで荒れた森林よりも温暖化抑止効果が高いということも言えます。


 

一方、環境問題で最も深刻とされるのが、大気への炭酸ガスの放出量増加を主な原因とする地球温暖化現象ですが、この重大なことがらについて、木材、さらに木造住宅が問題を解決する上で重要な役割を担っていると言うことができるのです。


 

ご存知の通り、木や植物は葉から大気中の炭酸ガスを、根から水分を吸い、太陽エネルギーをよりどころとして成長をします。このときに行われる「光合成」によって、木は地球温暖化現象の一つである炭酸ガスを取り込み、炭素を固定化して、酸素を放出します。


 

「木」の優れているところは、「木材」として加工され、「木造住宅」となった後も、その炭素を固定化したまま保存してくれます。この炭素は、燃えたりして酸素と結合しなければ炭酸 ガスにはなりませんので、住宅でいるうちは蓄えたままの状態、ということになります。


 

また、木は住む人にも良好な住環境を与えます。人間が衣服を着たり、脱いだりして体温を調節するように、木も調湿機能(吸湿・放出)により、周囲の環境を常に快適に保とうとします。


 

よく木造住宅は過ごしやすい≠ニ言われるのはそのためですが、単に構造だけではなく、生活に密着して感じられる部分、すなわち木材が調湿機能を発揮できる内装材≠ノ美しい無垢の木材を使うことをオススメしてます。一度試してみてはいかがでしょうか?


 

無垢の性格

不思議なことに木は切ったあとも生き続けます。もちろん成長することはなくなるのですが、無垢の床材となったあとも、湿度を調節する、という「木の特性により、伸びたり縮んだり、まるで「生きている」ような性質を持ち続けます。


 

そのため十分に乾燥させ、安定させた状態で無垢材は使用されます。しかしながら、冷暖房の発達した現在の住まいにおいては、無垢の伸縮性をとめることはとても難しい問題です。また昨今の住宅は精度が求められるため、その伸びたり縮んだり≠ニいう木本来の性質がなかなか認知されず、それがクレームとされてしまうケースも多々あるようです。


 

反面、工業化製品としての複合フローリングは木材特有の伸縮性を抑えた構造になっています。それに加え、汚れにくかったり、抗菌作用のあるなど、床材としての付加価値をつけたものとして流通しています。そのため、精度の高さ、色や木目模様などのムラが気になる方には馴染みにくいものになるかもしれません。しかしながら、無垢材は部材となっても人に優しい住環境を作り出していることを考えると、それ以上の効果をもたらしてくれていると考えられます。


 

無垢材が隙間をあけているようであれば、あっ、湿気をはいているんだね=Aくっついているのであれば湿気を吸ってくれているんだなぁ=Aなんて長い目で木を見ることができれば、きっと愛着のある、そして快適な住まいを手にいれることができるでしょう。


 

程よい湿度に保って快適

木の家の住み心地がいいといわれるのは、木による調湿作用があるからだといわれています。湿度が高いときには空気中の水分を吸収し、逆に低いときには水分を放出し、適度な湿度を保つ働きをしてくれるからです。


 

この木材の機能は、特に高温多湿の夏や乾燥する冬に効力を発揮し、快適な住環境をサポートしてくれます。ジメジメ、カサカサといった不快感がなくなるだけでも、木をインテリアとして使う効果は大きいといえるでしょう。


 

木の香りでリフレッシュ

芳醇(ほうじゅん)な香りを持つものもあれば、鼻にツンとくるもの、香りはさほど強くないけれど妙に落ち着くものなど、木材は樹種によって個性的な香りをもっています。また木が発散する香りは睡眠時のα波を増加して疲労回復やストレス緩和などのリフレッシュ効果を促進する、という研究結果も出ています。


 

特に血圧を下げたり、脈拍の乱れを減少させたりする、といった木の効果は、仕事でストレスをため込んでいるお父さんたちに不可欠なのかもしれません。
ご家庭では家族の愛情と木のインテリアで、安らぎのひとときとなる場所を作ってみてはいかがでしょうか?


 

カビ・ダニ防止で衛生的に

木のインテリアはカビやダニの発生を抑える効果があります。カビの原因は湿度ですから、「程よい湿度に保って快適」で述べたように、室内の湿度を快適にする木はまさにカビの発生を防止する役目を持っています。


 

特にダニは赤ちゃんのいるご家庭では大敵です。不衛生であるばかりか、病気やアレルギーの原因にもなってしまいます。
そのため、無垢(むく)の木の床にすれば、木に含まれている精油成分がダニの抑制効果を持っているため、ダニ発生を防ぐことが可能となるでしょう。


 

温かくしてくつろげる

鉄に触ったときに冷たい≠ニ感じた経験はありますか?逆に木に触ったときは温かい≠ニ感じることと思います。これは木そのものが私たちの体温を急激に奪わないからです。
木は伐採しても細胞として構成されていて、その細胞の中に熱を伝えにくい空気が含まれているため、木を触ってもあまり冷たいと感じることなく、逆に徐々に体温と同じようなぬくもりを感じることと思います。


 

昔の人たちは、木の性質を知って箸(はし)や茶碗(ちゃわん)など、肌に直接触れるものを木でつくっていたのではないでしょうか?
木材はかつて生物として森や林を形成し、人と暮らしてきました。その生命のぬくもりが人間の肌を通して、ほのかなあたたかさを伝えてくれるような感じもありますね。


 

木は狂う?!

木が割れる、反る、縮む。これらは木が乾燥している度合いによって生じる現象なのです。木は一つの塊のように見えますが、実は細かな細胞によって形成されています。 木は年輪に沿って繊維方向、接線方向、年輪の方向の3方向に分けたとき、それぞれにおいて木の収縮する度合いが異なります。


 

例えば丸太が割れるという現象は、樹皮に近い部分と中心に近い部分の収縮率が違うために生じてしまいます。また反りについても同様なことが言えます。割れや反り、収縮を極力抑えるため、現在では木を乾燥させる技術が用いられており、市場では「乾燥材(かんそうざい)」として販売されております(※乾燥材でも品質はあるので注意が必要)。


 

構造的な欠陥になるほど割れてしまう場合はともかく、木が割れることはごく自然なことなのです。無垢は大気中の水分を吸収したり、放出したりして、いつも適切な環境にしてくれます。例えば、湿気の多い夏は水分を吸収して伸び、逆に乾燥する冬には水分を放出して縮みます。これは木が呼吸しているためであって、生きている証ともいえます。